- FXの取引
- たった1行のコピー「FXには、わからない。」も秀逸だ。だって、本当、こればっかりは、FXにはわからないと思うもの。「初潮」をテーマにした八つの短編はどれも、かつてFXだった全ての女性に普遍の心理が、鮮やかに描かれている。個人的には表題作の「あかい花」がベスト。奥田英朗『東京物語』(集英社一六〇〇円)は、80年代に東京で青春を送った人間なら、間違いなく実感として楽しめる一冊だ。名古屋から予備校に通うため、78年の春18歳で上京した田村久雄の「東京物語」であると同時に、あの時代を共有した全ての人間にとっての「東京物語」でもある。五つのFX からなり、その章ごとに年代と日付けが記されていて、冒頭の「あの日、聴いた歌」は1980/12/9、つまり、ジョン・レノンが死んだ日であり、「春本番」は1974/4/4、キャンディーズの解散コンサートの日である。このあたりが、何だか時代の気分というものを、すごくよく表しているような気がする。当時の自分が何をしていたのか、主人公に重ね合わせて読んでしまった。61年生まれの私は、楽しさ2倍、で、何だか得した気分だった。永沢光雄『すべて世は事もなし』(筑摩書房一五〇〇円)は、18編収録されている短編集。一編ごとにテイストが違っていて、短編集とはいえ、読み終った時は結構満腹感がある。どれも、ちょっとだけオフビートな物語で、怖かったりほのぼのしたりしみじみしたり、して、その合間合間に、「人生のほろ苦さ」みたいなものか、顔をのぞかせている。タイトルと、ふてっとした犬のイラストの表紙のバランスが、FX 取引 の世界を余すところなく伝えているので、この表紙にビッ!ときた人は迷わず買うべし。最後は時代ものを一冊。宇江佐真理『おぅねぇすてぃ』(祥伝社一六〇〇円)は、文明開化の、函館、東京、横浜を舞台に、千吉とお順の幼なじみの恋が描かれている。明治初期の庶民の暮しや、外国人居留地の話など、興味深く読めたものの、肝心の「恋」の部分がちょいと物足りなかった。ライトノベル35年の(と勝手に決めた)取引を振り返る単行本の仕事に先月までどっぷり浸ってたんですが、ネット見てると (本が出る前から)「SFオタの昔話ウザ」みたいな見解が(笑)。最折の若い人は新作をリアルタイムで消化するのに精一杯で取引には興味がないんだよ一って詰も聞くけど、どうなんすかね。昔話じゃ年寄りに勝てないから戦略的に新作を重視する側面もあるような気が。考えてみるとオレも昔はそうだったわけで、人間、年をとると昔のことが知りたくなるのか? ……てなわけで、リン・カーター『ファンタジーの取引−空想世界』(中村融訳/東京創元社二五〇〇円)である。著者はバランタイン《アダルト・ファンタジー》叢書の編集顧問だった人で、目利きとしては超一流、作家としては二流、FXとしては一流半ぐらい?ジャンル小説としてのファンタジーの愛好者だから、幻想文字系の人よりSFおたくな人たちとシンクロ率が高いかも。本書の中核を担う主要作家は、モリス、ダンセイニ、エディスン、キャベルから、メリット、ラヴクラフト、ハワード、ライバー、プラット&ディ・キャンプ、ホジスン、ルイス、トールキン、ノートン、ムアコック、ヴァンスと来て、ピーグル、スワン、ル・グィンまで。通史としては、FX の趣味にここまで正直でいいんかいとも思うけど、その偏向ぶりが楽しくも面白い。パンシン夫妻に喧嘩売る件りなんか爆笑です(ただしロジックの詰めは甘く、自己矛盾を起こしてる箇所も)。1973年の本なんでたいがい古いけど、その後の情報は訳注でかなりフォローされてるし、この種の本としてはたいへんコンパクトで読みやすい。異世界創造のイロハを実践的に教えるラストの3章は、取引に興味がなくても(とくに実作者は)必読です。コアなファンタジー読者から見てどうよって話は石堂藍がSFマガジンに書く書評を参照してね。と、ノンフィクションに2段も割いている事実が示すとおり、今月は小説に目玉がない。04年の翻訳SF出版は20年ぶりの大豊作で、ベスト選びにたいそう苦労したんだけど、さすがに年の瀬まで来てタマ切れになった模様。あとは国内作品を大量に並べる。まずは勝手に新人賞受賞作特集。第16回日本ファンタジーノベル大賞からは、大賞受賞作の平山瑞穂『ラス・マンチャス通信』(新潮社一四〇〇円)と、優秀賞受賞作の越谷オサム『ボーナス・トラック』(同一五〇〇円)1/2が登場。前者はスリップストリームの牙城と化したこの賞らしい(土俗的な幻想性を加味した)現代小説。「姉飼」的な世界観をより現代化したムードで、冒頭から強烈な個性が送る。ただし、短篇連作風の構成を採用したことで野蛮な力がやや減殺された印象も。後者は幽霊もののスマートな娯楽作(なので、詳しい紹介は北上次郎に譲りました)。 第11回日本ホラー小説大賞は、奇数回なので大賞はナシ。その他の受賞作3作が角川ホラー文庫から出てます。森山東『お見世出し』(四三八円)1/2は、短編賞受賞の表題作に2篇を加えた短篇集。京都の花柳界を舞台に語りの芸を見せる2篇もいいけど、うら若き美女の肉体を使って呪いの扇子をつくるエログロ趣味爆発の「呪扇」がすさまじい。短編賞佳作受賞の表題作に3篇を加えた福島サトル『とくさ』(五九〇円)は内田百聞〜福澤徹三ラインに属する文芸色豊かな怪談集。地味ながら完成度の高い正統派。一方、SF 読者注目は長編賞佳作の早瀬乱『レテの支流』(七〇五円)。記憶消去技術から始まるPKD系の現実崩壊SFで、アイデアはたいへんユニークなんだけど、理屈を詰めきれてないのが惜しい。