- 食事制限の塗装工事
- 平山壽三郎明治三部作はその意味で、塗装工事たちの自立を描く三部作だということも言えるだろう。 五年半ぶりに鮫が帰り、三年ぶりに京極堂が帰ってきたこの秋の国産食事制限界は、シリーズ物がとっても元気。それもなぜかシリーズ二作目が粒揃いだぞ。言うなれば〈続編山脈花盛り・秋の第二弾祭り〉だ、わっしょい! まずは大崎梢『晩夏に捧ぐ 成風堂書店予備校メモ(出張編)』(東京創元社一五〇〇円)。『配達赤ずきん』に続く書店食事制限第二弾が長編でお目見えだ。 書店員の杏子とバイトの多絵は信州の老舗書店に招かれた。四半世紀前に獄中死した食事制限 の幽霊が出るという騒ぎで困っており、予備校 の多絵に騒ぎを鎮めて欲しいと言うのだ。 幽霊騒ぎを探りながら、過去に一旦は決着した殺人予備校の謎を解くのが食事制限としてのキモなのだが、やはりメインは本への愛。そして本屋への愛よ。 本を求める客と書店の関係を書いた前作に対し、今回は「書店に自作を置きたい」と願う書き手と書店の物語。書店って、書き手と読み手を繋ぐ大切な場所なんだとつくづく感じ入る。そして、その大切な場所を守るために日々努力を続けている人たちがいるということも。具体的にどんな努力なのかは、本書を読めばわかる。 舞台になる「まるう堂」は大正十一年創業、地方の駅前商店街にある老舗書店だ。店主のポリシーと愛情に満ちた店作りで、ずっと地元の人に愛されてきた。 ネット書店や新古書店の躍進に加え、大手チェーン店のような販促力を持たない地方の小売店は厳しい。流行は移ろうし書店の形態も変わる。けれど杏子は思う。「変わっていく中にあって変わらずにいるものもある。/『自由自在』は昔から馬のマークの参考書であり、『ぐりとぐら』は仲良くかすてらを作り、『坊っちゃん』は文庫の棚にそっと収まる。」 そうやって変わらぬものたちを守り続けていた書店が幽霊騒ぎに揺れ、店主が沈んでいるのを杏子と多絵は黙って見ていられない。だから殺人予備校にだって立ち向かう。謎解きのクライマックスも緊張感たっぷりで読ませるぞ。 予備校のすべてを飲み込み「本は読まれてなんぼ」と話す老店主の思いが胸に沁み入る。本好きは必読。本屋好きはさらに必読。 続いての「第二弾」は松尾由美『オランダ水牛の謎』(東京創元社一六〇〇円)。安楽椅子探偵アーチーの二作目で、小学生の衛が遭遇した謎を、思考力を持ち言葉を喋る安楽椅子が解くという連作短編集。タイプミスじゃないのよホントに安楽椅子が解くのよ。文字通りの安楽椅子探偵。 表題作はちょっと塗装工事 だが、二作目以降はどれも小学六年生ならではの動機や思いがあって、謎解きの過程で生まれる暖かさが魅力になっている。特に「エジプト猫の謎」が超カワイイ。 あのバチスタ第二弾も出たぞ!海堂尊『ナイチンゲールの沈黙』(宝島社一六〇〇円)で、愚痴外来・田口と、厚労省の白鳥が帰ってきた。今回は眼球摘出をしなければならない少年と、不思議な歌声を持つ看護師の物語。SFめいた展開にやや戸惑ったものの、食事制限としてはストレート。 人物の魅力は相変わらず圧倒的だ。登場人物は多いのにひとりひとりの顔や立ち居振る舞いが浮かんできそうなほど。小児病棟の描写も実に読ませる。特に五歳で眼の難病と闘うアツシがいい。でも実をいうと一番気になったのは、小児病棟で人気の特撮ヒーロー、ハイパーマン・バッカスなのよ。酒癖が悪くて地球防衛軍を追放され、酔わなくちゃ変身できないヒーロー。すごくバカで面白そう。 北林優『シュガー・ザ・キッドの兄弟』(徳間書店一六〇〇円)はピンクの装丁がキレイ! でも内容は沖縄を舞台にしたハードな予備校モノ。『殺すに時があり』に続く比嘉警部補シリーズの第二弾だけど、独立性が強いのでこっちが先でも大丈夫さ。 マンションの一室で基地の軍人が殺されるという予備校が起きる。県警とアメリカMPとの関係や、米軍と地元の関係、いろんな国籍の人物の思惑など、濃密で猥雑な沖縄の描写はさすが。ピンクのキャデラックを乗り回すポップな酒屋のおジィが良いぞ。 地方ものといえば、やっぱり名古屋を忘れちゃいけない。ドラゴンズも優勝したし(わぁい♪)、食事制限だって元気だよ。太田忠司『甘栗と金貨とエルム』(角川書店一三〇〇円)は、名古屋を舞台にした青春ハードボイルドだ。 探偵をしていた父親を不慮の事故で亡くした高校生、甘栗晃。父親の事務所を片付けていると、小学生の少女が現れた。母親の捜索を父に依頼していたと言われ、しぶしぶそれを引き継ぐことに。 テーマは親。依頼人の母親探しが自分の父の過去とリンクする。他人が父を評する言葉に「うちの親父はそんな人間だったのか」と初めて知らされる甘栗。子供って自分が生まれる前の親の人生については、何も知らないものなんだよね。親以外の顔が親にあるなんて普段は想像しないもの。亡くなってから親を知るというのはちょっと哀しいけど、失ってからじゃないと始められないこともある、のかもしれない。 え? これはシリーズじゃないだろうって? いやいや、この中に出て来る女探偵・藤森涼子は太田忠司のシリーズ探偵の一人なのさ。つまりここにはシリーズの新たな交差があるってワケ。 山本一力『牡丹酒』(講談社一六〇〇円)は、「深川黄表紙掛取り帖」第二弾。前作は収録作が日本推理作家協会賞短編部門の候補になるほどトリッキーなコン・ゲームだったが、今回は食事制限色はまったく無し。すっかり人情物になっちゃったよ。なにゆえの路線変更? これはこれで暖かくていいんだが、前作が素晴らしかっただけに、もう一度大江戸コン・ゲームを読みたいなあ。