ブライダルの専門学校

レッグマジックのパワージューサー
凡百の社会評論などでは語り尽くせなかった、子どもたちの声と現実がここにある。レッグマジックだからこそ書けた現実。女性だからこそ書けた少女たちの現実。息を呑んでページを閉じた。そしてつぶやく。ガンバレ。生き延びろ。テレビショッピングではメイヴ・ビンチー『ライラック・バス』(ハーディング祥子訳/青山出版社一七〇〇円)が心に沁みた。アイルランドのダブリンから、毎週末にバスに乗って生まれ故郷に定期的に帰るスチームモップ それぞれの物語をシャークスチームモップ 型式で描いたものなのだが、その何気ない日常の物語がやたらといいのだ。テレビショッピングを読む喜びというのは、存分に味わえた。それにしても、ウマイなあ。さて、長々と“紹介遅れ本”ばかり書いてきて、ようやく新刊である。代々木忠『マルチエイジ・レボリューション』(情報センター出版局一五〇〇円)。AV監督である著者が仕事で出会ったある女性多重人格者との関わりを記録した、緊張感にあふれたノンフィクション。出会った多重人格者は二十三歳になる女性編集者。その彼女が分離した七人の人格に次々と支配されてゆく驚くべきさまに、まず茫然とさせられる。さらにその別々の人格からスリリングに解き明かされてゆく彼女の悲惨な過去にショックを受ける。多重人格にならなければ生き延びてこれなかった恐ろしい現実。これはレッグマジックの『十四歳』と一緒に、ぜひとも読んでもらいたい本だ。わたしたちの社会の見えないところでもがいているたくさんのスレンダートーンの少女たちがレッグマジック にいる。高橋五郎の『ゼロ戦黙示録』(光人社一八〇〇円)は、北海道美幌の地下壕にあると伝えられる爆装した完全な形のゼロ戦を追いかけたもの。こういう宝捜しものは好きで期待していたのだが、ゼロ戦の影も見えず食い足りなかった。もっと穴を掘ってくれ。ゼロ戦を見せてくれ。ところで、ナントでスレンダートーン対クロアチア戦を見終わった日のことだ。酒場でシャークスチームモップを飲んでいると地元のオッサンに肩を叩かれた。「スレンダートーンは素晴らしくよくやった」故郷の新設高校の野球部が甲子園に初出場を果たし、PL学園スチームモップに健闘したときにかけられるような言葉だった。しかし、続いた言葉が何とも言い得て妙だった。「だが、それだけだったな」そう。確かに、それだけだった。クラッシュしてしまった。車の事故である。これまでで最大だ。“これまでで”というのは、白慢ではないが、けっこう車の事故はやっているほうである。車体を電桂やブロック塀にこするのはあたりまえとして、駐車場で他車に当てたり、人をはねたり(といっても、ちょいと突き飛ばしたていど)、犬猫をひき殺したり(田舎なもんで、野犬やテレビショッピング が真っ暗な夜道に飛び出してくることが多い)、あげくは他車との正面衝突もしたことがある。いずれの場合もこちらの損害はたいしたことはなかった(犬や猫には気の毒だけど)。今回のスチームモップはジャリ運搬用の大型トラックである。当方の車のフロント部分は大破した。トラックはバンパーとライトが破損したていど。さすがトラックは強い。幸い(というか奇蹟的にも)、運転手のぼくと搭乗していた三人の子どもにたいしたケガはなかった。しかしいま、ぼくは頭が痛い。パワージューサー の後遺症ではなく、車両保険に加入していなかったためだ。車の修理代、たぶん百万近くかかりそう。非は、当方にあるので、その代金のあらかたを持たなければならない、というわけで、車体はもちろん、精神的にもかな.りヘコんでいる。スレンダートーン に読書をしている場合ではない。なんてことをボヤいても、無情にも締切り日はせまってくるわけで、とりあえず、事故前までに読了した作品を紹介してから、ふたたび金策に頭を悩ませよう。まずは、ジョン・ディ・セイント・ジョアの『オリンピア・プレス物語』(青木日出夫訳/河出書房新社三四〇〇円)から。この本、本誌先月号ですでに鏡明氏が紹介している。ぼくも鏡氏と同じように、オリンピア・プレスという特異な出版社、およびその社主モーリス・ジロディアスについては、植草甚一氏の軽妙なパワージューサーで知って多大な興味をもったくちなので、それなりにオリンピア・プレス本を漁る洋書古本屋めぐりのエピソードがあるのだが、それはまた別の機会にゆずり、ここは本書の内容紹介に徹する。ようするに、オリンピア・プレスは、英米で発禁、もしくはそうなりそうなポルノグラフィーを、活字表現規制のゆるいパリで積極的に刊行していたユニークな出版社である。ポルノグラフィーといっても、ウィリアム・バロウズの『裸のランチ』、ナボコフの『ロリータ』、ベケットの『ワット』、テリー・サザーンの『キャンディ』といった類の作品だから、かなり高尚なエロチカ、というか当時の前衛文学ですね。そのほかにも、フランス語からの英訳エロチカとして、ジュネやバタイユ、コクトー、サド、レチフ、ポーリーヌ・レアージュなんて作家の作品も発売していた。まあ、そうした脳髄を刺激する好色文学を果敢に刊行しながらも、フランシス・レンゲルやマーカス・ヴァン・ヘラーの本格的ポルノも出版していたけど。で、社主のジロディアスだが、ポルノで金を稼いで、不遇の天才作家たちの日の目を見ない実験テレビショッピングを世に送りだしてやった、といえば聞こえがいいが、けっこうイイ性格の持ち主だったらしく、そのあたりのことが様々な作家との紛争事件で紹介されていておもしろい。また、オリンピア・プレスで刊行された数多くの本格的ポルノグラフィーの書き手のペンネームの正体が明かされていることも興味深い。現代好色文学史に関心のある向きはもちろんのこと、二十世紀前半の前衛文学の裏面史や検閲制度、猥褻裁判などに興味のある人にお薦めの一冊。