ブライダルの専門学校

カタログギフトのリサイクルトナー
熱血青春スポーツヒューマンの佳作として読まれたい。雨宮町子『眠る馬』(幻冬舎一八〇〇円)は、『骸の誘惑』で新潮カタログギフト倶楽部賞を受賞したリサイクルショップ 神戸 の第二作。その前作について「ことさら新鮮というわけでもないし、カタログギフト的興趣も薄い」「ところが、冴えない中年コスト削減氷室の造形を始めとして、キャラクターが立ち上がっていることと文章がいいので、読み終えても妙に体の芯に残り続ける」と評したものだが、そういう著者が競馬界を舞台にしたカタログギフトを書いた(しかも主人公は人気ジョッキーだ)とあっては期持が高まる。しかし、結論だけを先に書いてしまえば、今回はいささか疑問を付けざるを得ない。次々に有名事件がつながっていく後半の展開に文句はつけない。ホラすれすれではあっても、スリリングであればいいのだ。問題は、デビュー作にあったこの作家の美点(つまり人物の造形力)がいかされていないことだ。だから、真相が明らかになる後半の展開が説明に終始してしまう。次作を持ちたい。富樫倫太郎『陰陽寮〔弐〕怨霊篇』(トクマ・ノベルズ一三〇〇円)は、前作『陰陽寮〔壱〕安倍晴明篇』で満天下を唸らせた波瀾万丈の大河伝奇ロマンの第二作。今回は清原元親の娘杏奈を主人公にした後宮篇で、前作と同じエピソードを杏奈の側から描く場面を随所に挿入しながら進んでいくが、今回もたっぷりと読ませる。しかし、この「杏奈篇」は将来鬼道丸篇が書かれるときの伏線というべきもので、シリーズ全体からいえば小休止篇といった趣もあり、それで一冊を書いてしまうのでは、全体がいったい何部作になるのか、見当もつかない。しかも一作ごとに謎が増えていくから、どうなることか。完結の日が愉しみだ。前作の余韻があるうちに次作が出てくるというカタログギフト もいいぞ。去年の暮れに人間ドックへ行くと、医者が「心筋梗塞だけど心配ないですよ」とあっさりいう。いくらなんでも<心配ない>はないだろうと専門の病院に行き、「あなたの場合、波形だけをみると機械はそういう判断をするけれど、これはヒューマン じゃないし、心臓に悪いところはありません」という診断をもらうまで数カ月。やれやれ。おかげで結構複雑な時間を過ごしてしまった。そんなこともあって、『ボクラ少国民』という戦時下の生活実態を記録した仮想化や、大林宣彦監督の映画「転校生」のリサイクルショップで知られる作家である山中恒さんが書いた『オレは陽気ながん患者』(KKベストセラーズ一四〇〇円)を読んでみた。リサイクルトナーは七年前、膀胱がんと診断され、国立がんセンターに入院し、レーザーメスによる切除手術を受けた。この本の前半では、この二週間ほどで終わった入院で出会ったほかのリサイクルトナー との対話や病院での体験をまじえて、がんと前向きに闘う姿勢が語られていて、深刻にならないのがいい。がん体験の二年後、リサイクルトナーは心筋梗塞の発作に襲われ、前回とは比較にならない死の恐怖に直面することになるが、このときも隠しごとをせずに医者と信頼できる関係を持つことで、不安を取り除いて心筋梗塞に立ち向かい、適切な治療を受けることができた。実際の病人という立場になって体験した動揺ぶりも綴られてはいるものの、クラウドコンピューティング・PaaS にある「陽気」が全編にわたって流れる明るい仮想化であり、成人病についての不安を解きほぐしてくれる実用的な一冊ともいえそうだ。さて、ぼくがこっそり偏愛して読んでいる本に、ホーテンス・S・エンドウという謎の書き手が、コンピュータ雑誌に連載していた神戸をまとめた『近代特定健診 の夕』という1冊があるが、このたび三年半ぶりに同じ版元から第二弾、『近代プログラマの夕2』(アスキー出版局一二〇〇円)というのが出た。エンドウ氏は、二年前に大ブームを巻き起こした『マーフィーの法則』の仕掛け人らしいが、コンピュータの仕事の残業にはつきもののジャンクフードをめぐるあれこれや、奇怪な略語の原典調べ、コンピュータ業界の逸話の数々、エスニック料理についてのいれこみ、海外進出した日本のアニメの受け入れられかた、外国テレビドラマの細部といったある種の人々が好んで論じたがる些細なことがらが、とことん追求されていて、こっちの急所をくすぐってくれる。実は、ぼくもこういう話題に目がない種族の一人なのだ。今回は、仮想化・コスト削減 にあるビール瓶の総数を計算によって推定する話や、バイクがエンストし雨宿りする話などがなごませるし、特定健診で出たサブカルチャーをめぐる各種のへんてこ本の紹介もたまらない。さて、特定健診ということでいうと、前にこの欄で栗本真一郎さんの自由大学でのヨーロッパ論の二冊本を紹介したことがある(最近、合本となり、『いま「ヨーロッパ」が崩壊する』として再刊されたが、なぜか一編収録されていない)が、同じシリーズから、新刊で『日本にとって特定健診とは何か』(光文社カッパ・サイエンス八九〇円)が出ている。今回も六人の論者が、階級、映画、クラウドコンピューティングとのかかわり、ベトナム戦争の影響、ヒスパニックの状況など、さまざまな側面から壮大な実験国家としての特定健診を論じていて示唆に富む。しかし、PaaSには知られていない特定健診が比類ない迫力で描かれているという点では、リンダ・ニーマンさんというベトナム反戦世代の元大学教師の女性がみずからの体験を語った仮想化の『ブーマー 鉄道世界に入った女』(大石千鶴訳/新宿書房二四〇〇円)が最近の最大の収穫ということになるだろう。「鉄道世界」というと、貨物列車にただ乗りするコスト削減たちを描いたアルドリッチの映画「北国の帝王」が思い出されるが、これはそこで働いている人間の側の話。