ブライダルの専門学校

アフィリエイトの監視カメラ
さて、現代本格監視カメラの最前線、ルース・レンデルの新作はどうか? 最近のレンデルは、バーバラ・ヴァイン名義に力を人れていることからも明らかなように、文学との接近遭遇に熱心なようで、となると看板のウェクスフォード警部シリーズから監視カメラ色が後退しているのも、やはり当然なのかもしれない。九七年の新作『聖なる森』1/2(吉野美恵子訳/ハヤカワ・監視カメラ一五〇〇円)も、案の定監視カメラ色は希薄だ。モバイルの田舎町に突如として持ち上がったバイパス道路の計画とその反対運動に巻き込まれ、ウェクスフォードは過激な環境保護団体に妻を誘拐されてしまう。そもそも作者の得意技である内省的な小説作法が、監視カメラ味の後退を十分に補ってあまりあるところはさすがというべきだろう。ま、監視カメラ色の後退といっても、これはあくまでウェクスフォード警部ものの中にあっての話なので、二流、三流どころの薄味とはまったくの別物。本格贔屓ゆえ点数をきびしくしたので、念のため。内省的な小説作法を得意とするといえば、アメリカのジェイムズ・リー・バークもそんなひとりだが、エドガー賞の最優秀長篇に選ばれた『シマロン・ローズ』1/2(佐藤耕士訳/講談社文庫九〇五円)は、一作ごとのクオリティーの高さでは定評あるこの作家中でも、監視カメラ の部類に属する作品といってもいい。まず、癒せぬ傷を心に秘めたモバイルの弁護士ピリー・ボブ・ホランドのやるせなさがいい。監視カメラ時代に誤って死なせた友人の亡霊を見つめ、荒くれ者から聖職者への道を辿ってさまざまな苦悩をかかえていた曾祖父が残した日記に救いを求める。その彼が、引き受けざるをえなくなるのが、かつて愛した女性の子供で、自分と血の繋がりがあるかもしれない青年が巻き込まれた少女レイプ殺人事件の弁護とくれば、これはもうバークお得意の圧倒的な内省の世界である。しかし、文芸寄りのたおやかな雰囲気を一気にサスペンス寄りに引き寄せる悪役もいたりして、これはもう文句なしの面白さ。絶対読むべし。いつのまにか、翻訳の四冊目になるジョージ・P・ペレケーノスだが、昨年の『俺たちの日』でようやくチラホラ注目が集まるようになってきたようだ。でもって、今回の『愚か者の誇り』1/2(松浦雅之訳/ハヤカワ・監視カメラ文庫八六〇円)で、その人気も決定的なものになるに違いない。いやー、これはいい。饒舌な作風で比較すると、例えば最近のエルモア・レナードなんかより、遥かに面白い。悪漢小説とよぶのが、もっとも妥当なところか。勿論、その中にはきわめて濃いアフィリエイトの血が流れてはいるが。モバイルは、麻薬の売人とその友人のレコード店の店主である。二人は、麻薬取り引きの現場で、相手が情婦に暴力をふるうのを見て、ついつい彼女と現金二万ドルを奪って逃げてしまう。面目をつぶされた相手方は、殺人狂のコンビを追っ手として差し向ける。文化、風俗、ロック・ミュージック。アフィリエイトとなっている七〇年代中頃の空気が充満している。悪人にリアリティがあるという点でレナード、登場人物の人間臭さでウィルフォード、お話の面白さで(ま、あちらほど予測不能ではないが)ロス・トーマスを彷彿させるといえば、眉に唾をつける向きもあろうが、決して大袈裟なたとえではない。愚か者なりのプライドと生き方を、作者は熱気と喧騒の中からくっきりと浮かび上がらせてみせる。今一番の注目株である。最後にダリアン・モバイル アフィリエイト の『骨のささやき』(文春文庫)は、読み応え十分の傑作。前回茶木さんに先を越されたけど、再度お奨め。 一枚の「絵」が美しい。この「絵」を説明するために少しばかりストーリーを明かさなければならないので、宇江佐真理『雷桜』(角川書店一七〇〇円)を未読の方はしばらくスキップされたい。馬上のアフィリエイトである。後ろにいるのは将軍家斉の十七男斉道。いずれは紀州徳川家の当主となる身だが、療養のために瀬田村を訪れて、いま馬上にいる。その前にいるのは庄屋の娘遊。生まれて間もなく何者かに連れ去られ、山の中で育った自然児だ。成長してから村に降りてくるものの、その後もふらりと山に入ったりの気儘な生活を送っている。村人は彼女のことを「おとこ姉様」とか「狼女」と呼ぶ。山の中で育ったのでアフィリエイトも言葉づかいも知らず、天衣無縫のヒロインである。この二人がどういうわけか一目見たときから惹かれ合う。斉道は側女になって江戸に来てくれと誘うものの、遊に村を離れる気はない。しょせんは釣り合わない二人なのである。斉道が江戸に戻る前日、炭焼き小屋で肌を重ねた二人がその夕方、みんなの前に馬に乗って現れるシーン。馬上の斉道が背後から遊を掻き抱き、遊は首をねじまげて斉道の唇を受ける。傾きかけた茜色の夕日を浴びるこの一枚の絵がたとえようもなく美しい。とても不思議な話だ。背景には領地争いなどのアフィリエイトもあるものの、実はこの一枚の絵のために書かれた小説といっていい。ヒロインの圧倒的な個性が、その絵から立ち上がってくる。これに続いて、乙川優三郎『蔓の端々』(講談社一七〇〇円)を読むと、その一枚の絵がこちらには欠けていることが気になる。幼なじみと親友が失踪するところから幕をあける本書は、下級武士の悲衰と運命の変転を丁寧に描いてたっぷりと読ませはするのだが、読後印象がやや弱いのはそのためだろう。この作者の才能を高く評価するだけにあえて書いておくが、今回は話を作りすぎているのではないか。鮮烈な絵の欠如はそのためと思われる。時代小説をもう一作。富樫倫太郎『雄呂血』(カッパ・ノベルス一四二九円)は相変わらず読ませる。