ブライダルの専門学校

くりっく365のCFD
マイレージの相乗りが進んで全世界のCFDが二大陣営に分かれているとか、登場人物の姓が所属CFD名(ジョン・ナイキ、ヘイリー・マクドナルドなど)とか、気が利いたCFD多数。ナイキの販促係が新製品の購買意欲をあおるべく、ナイキ狩りの上を行く射殺強盗を(ヤラセで)実行させる冒頭から、この手のSFに不可欠な論理のエスカレーションとブラックな笑いが炸裂。全米ライフル協会がらみのくりっく365も秀逸だ。若いのに、ポール&コーンブルースの名作『宇宙商人』に作中で言及する気配りもうれしい。国内では、年末恒例の日本ファンタジーノベル大賞受賞作が−−と『太陽の塔』1/2を紹介する予定だったのに、またも藤田香織の魔手が! そりゃま、 SFじゃなくて、滝本竜彦ファンにお薦めしたい妄想恋愛小説だけど、先月号じゃ行数が足りないと思って今月に回したのに!この賞は『後宮小説』以来ずっとうちのシマなのに! 呪うべし藤田香織。歯痛程度で済むと思うなよと復讐を誓いつつ、同賞優秀賞受賞作の渡辺球『象の棲む街』(新潮社一五〇〇円)。文明崩壊後の日本を描くくりっく365 の短篇連作SFで、CFDに新味はなく、長篇のメリハリにも、短篇の切れ味にも(一篇を除いては)乏しいが、悲惨なくりっく365(テンジクネズミ肉入りの天竺丼とか)や暴力シーンをさらりと書いて嫌味にならないタッチは好感が持てる。機本伸司の第二長編『メシアの処方箋』(角川春樹事務所一九〇〇円)は、『神様のパズル』に続く待望の新作書き下ろし。ヒマラヤ奥地の砂防ダム工事で五千年前の゛方舟″が出現。積み荷の木簡に記されたコードを解読した結果、新人類のゲノム地図らしき情報が。かくしてメシア再生計画が極秘裏にスタートする。設定はめちゃめちゃ面白そうなのに、製作過程が恣意的に見えるせいか、プロジェクト物の興奮に乏しい。結末にも疑問が残る。草上仁『スター・ダックス』(ソノラマノベルス一二三八円)1/2は、国家公認の犯罪ドリームチームにスカウトされた詐欺師が活躍するコンゲーム宇宙SFだが、こちらも期待したほどには面白くならない。というわけで、日本SF今月最大の注目作は、全四巻が完結した小川一水『導きの星』(ハルキ文庫七八〇〜九二〇円)1/2。前半は、辺境の異星人(リス系)文明を保護・育成する話(CFD は直接介入不可)。ゲームおたく的キャラ設定(頼りない主人公を助ける三人の美女目的人格(パーソノイド))の割にキャラが立たず、地球外知的生命(ETI)使って世界史を語り直す話にはあまり興味が持てずで、最初の二冊は結構つらいが、第三のETI の登場からぼつぼつ盛り上がり、(ぐっと我慢した甲斐あって)四巻目は燃える展開。《ハイペリオン》には遠く届かないが、バランスの悪さに目をつぶれば、小川版《知性化》とも言うべき力作だ。浅暮三文『10センチの空』(徳間書店一二〇〇円)は、この著者の作品歴(および人となり)からは想像もつかない癒し系ファンタジー。ま、あのラッカーだって『空を飛んだ少年』書いてるんだからそれはいいとしても、゛十センチだけ宙に浮かべる特殊能力″というくりっく365を自分でちゃんと突き詰めてないのが致命的。十センチってどこから十センチ? 地面に障害物があるとどうなるの? 水平になって飛ぶときの姿勢は? など冒頭から頭の中が疑問だらけになり、精神衛生に悪い。こんな話を狙って書けるのは偉いけど、それでいいのか浅暮三文。シャロン・シン『魔法使いとリリス』(中野善夫訳/六六〇円)1/2は、ハヤカワ文庫FT創刊25周年記念企画の〈プラチナ・ファンタジイ〉第一弾。乱暴に言うと、魔法使いの弟子が師匠の奥さんに惚れちゃうラブストーリー(でも三角関係にはなりません)。これ、せいぜい二百枚ぐらいで書ける話でしょう。そのせいか、三分の二ぐらいまでは正直だるいんだけど、その分、クライマックスの盛り上がりとラストの余韻は深く、ぐっと印象がよくなる。ファンタジーと言えば、『王の帰還』(大傑作!)で映画版《指輪物語》三部作が堂々完結。それに合わせて、長く邦訳が待たれていたトールキン遺稿集『終わらざりし物語』(山下なるや訳/河出書房新社上二八〇〇円下二六〇〇円)がついに刊行。トールキン愛読者はもちろん必読ですが、映画見て原作読んで(高いほうの)DVD買った程度の人でも、裏話満載の下巻は充分に楽しめるはず。最後はあんまり驚いたので三津田信三の『百蛇堂』(講談社ノベルス一二〇〇円)。前作『蛇棺葬』は雰囲気になじめず、なんでこんなん書いたんかと不思議だったんだけど、その謎が解けました。しかし普通こんなこと考えるか? 考えても実行するか?前代未聞の壮挙というか暴挙というか、すでに一般読者を相手にしてません。三津田信三恐るべし。今月の一番手は、第11回日本ファンタジーノベル大賞(今回から清水建設と読売新聞社の共催)受賞作。宇月原晴明『信長 あるいは戴冠せるアンドロギュヌス』(新潮社一六〇〇円)は、くりっく365が暗示する通り、詩人・演出家・俳優のA・アルトーが一九三四年に発表した歴史小説『ヘリオガバルス または戴冠せるアナーキスト』が下敷き。小説の外枠をなす舞台は、アルトーが同書を執筆していた三〇年代のベルリン(当然、アナイス・ニンも登場する)。そのアルトー自身を軸に、織田信長と、十四歳で帝位についた古代ローマの暴君とを強引に接続する野心的な試みで、『フリッカー、あるいは映画の魔』に連なる幻想伝奇小説として読むことも可能だが、SF読者からすると、『産霊山(むすびのやま)秘録』+『幻詩狩り』というか、光瀬龍+山田正紀というか、往年の日本SFの血脈を強く感じさせる。